一般社団法人 書燈社

研究会報告

        【日本詩文書作家協会研究会第43回  

                 春季研究会参加レポート】

                                        2016/07/19 

                                          富岡不撓 

平成28年3月27日(日)?29日(火)、2泊3日、熱海は金城館にて、日本詩文書作家協会 第43回 春季研究会に初参加させていただきました。

*なるべく要点を絞りお伝えしますが、長文お許しください。

●概要

講師(3):辻本大雲先生(日本詩文書作家協会理事長・書道芸術院)、

大多和玉祥先生、荒金大琳先生、友野浅峰先生、橋本剛先生、藤田寿樹先生(以上、創玄書道会)、宮本博志先生(書燈社)、

大谷洋峻先生(日本書道美術院)、原田凍谷先生(登絖社)、河邉久美子先生(白峰社)、尾形澄神先生(書道芸術院)

研究会事務局:福田鷲峰先生、高野清玄先生(以上、創玄書道会)、石川通正先生(今回の研究会の事業部長、書燈社)、

田村鄭雲先生、大隅晃弘(以上、書道芸術院)、松藤春蝉先生(日本書道美術院)、森桂山先生(創玄書道会)

受講生(4):12の書道団体から合計111人参加(書燈社からは9人参加) *最終参加人数は未確認です

内容:詩文書規定課題(5)と詩文書自由課題(6)の制作と批評会、講師の先生方の席上揮毫(7)

講演(2):初日の開講式(1)の後、墨運堂の東京店竹内店長の「墨の話」 

*( )内の番号について後述

(1)

開講式:協会理事長・辻本大雲先生のごあいさつ

日本詩文書作家協会の歩みについて。また、新しい書や現代的な書の創作を問うおはなしがありました。

(2)

講演:墨運堂 東京店竹内店長「墨の話」

膠で変わる墨の特徴を、墨の種類、水の希釈具合、水温差などでどのような表情になるのか、

現物の作例を提示し、分かりやすく説明していただきました。

ウェブ上の「墨運堂総合カタログ」参照→ http://www.boku-undo.co.jp/HP/catalogbook/index.html

(3)(4)

日本詩文書作家協会の「正会員」が対象の研究会。「準会員」「会友」の、将来を期待される者も推薦で参加。A班?E班の5グループに分かれ、正会員が各班の正副班長を担当し、活動のまとめ役をしてくださいました。各班講師の先生2名ずつ担当になりご指導いただきました。わたしはD班で書燈社としては1人、講師の先生は友野浅峰先生(創玄書道会)と河邉久美子先生(白峰社)でした。各班、「会友」「準会員」「正会員」が混合で構成され、正会員は毎日書道展の会員で、実際に大人向けにも書の指導をされている方もいらっしゃいました。班の中に知っている人は誰でいませんでした。実習時間での会員のみなさんの書きぶりに感心し、目を見張りました。宮本先生のご指導は、どの班の受講生からも呼び止められる程、大人気でした。

(5)

詩文書規定課題(事前に出題されます)

今回は、「1豪快な表現」「2繊細な表現」「3叙情的な表現」の3つの表現より2つの表現を選び、課題文(短歌や俳句や童謡や詩)の中から題材を自分で選択し、詩文書作品を2点創作。研究会1日目の夜に提出。提出後、各班ごとに批評会が実施され、講師の先生にご指導いただきました。たとえば、同じ「繊細な表現」を試みたとしても、豪快にも写る作品もあり、書道団体ごとの多様な表現が提出されました。表現の幅を持つことやその幅を受容する寛容さも必要だと感じました。講師の先生の講評のお言葉の中には、初めて知る視点や指摘があり、学びとなりました。

(6)

詩文書自由課題

主に、毎日書道展出品のための創作。2日目に実習し、夜に提出。受講生の数だけの多様な表現が生み出されました。

提出後はA班?E班ごとの「グループ別活動」がありました。半紙サイズで詩文書を創作し、クジ引きで交換する班、複数のメンバーで一枚の詩文書を合作する班、墨色について研究する班など、それぞれに特徴がありました、わたしが所属したD班では、講師の先生に創作に関して質問し、ご指導していただくという内容でした。質問の内容は事前にメンバーにアンケートをとり、正副班長が決めました。その内容は「行き詰まっている時はどうしますか?」「草稿づくりの方法は?」「一行書きのコツは?」「紙面構成について」「詩文書の可能性について」「書とは何ですか?(わたしの質問)」などでした。

翌3日目の朝から全体の合評会が実施されました。作品を持つ係り等、参加メンバー総出で役割分担しました。1作品につき講師の先生2人に批評いただきました。毎日書道展の審査時のように少し距離を置いた場所からの批評でした。短い時間内での先生方の的確な審美眼と批評は流石でした。自分以外の作品に対する批評の内容に耳を傾けることが、新たな学びとなりました。また、百花繚乱な作品たちの中でもひと際目を惹く作品がありました。訴えかけてくる何かがあるか無いか?  その違いは何か? 問いかけをしながら拝見し、目習いにもなりました。

*(5)(6)の作品サイズは、毎日書道展の規定の通りです。

*会場では、書道用品の、鶩毛堂、慶花堂の出張販売がありました。

(7)

講師の先生方による席上揮毫

2日目の午後から、受講生向けの規定課題同様「1豪快な表現」「2繊細な表現」「3叙情的な表現」の3つの表現より、くじ引きで引き当てた表現での、講師の先生方の席上揮毫が実施されました。進行は石川通正先生で、ユーモアと笑いのある席上揮毫となりました。先生方の揮毫の姿は大注目で、その書きぶりをわたしも目に焼き付けました。揮毫された作品は、閉会式でくじ引きでプレゼントされ、抽選時には会場がわきました。

番外編:連日夜には、宮本先生、石川先生と書燈社の参加メンバーが集まり酒盛りしました。宮本先生のおはなしをたくさんうかがえました。メンバーそれぞれの書に対する気持ちや悩みなども知ることができました。わたしは、酒やかわきものの買い出し担当に任命され、同参加者の東京の飯倉指南さんに買い出し方法を教えていただきながら夜の熱海を歩きました。書燈社の参加メンバー間でも互いに知らない者同士でしたので、交流ができたことはありがたいことでした。別室でも、講師の先生方と参加メンバーで酒盛りが盛大に行われていました。みなさんタフでした。そういうわたしも、ほとんど寝ないで3日目を迎えました…

個人的感想:知識の面でも技術や表現力の面でも、未熟さを痛感しました。書燈社以外の書道団体の先生方に直接ご指導いただく経験は初めてでした。友野先生の「どんな作家になりたいのか?」というお言葉がこころに残っています。荒金先生の「この研究会で得たことを、みなさんが帰ってから、それぞれの場所で伝えてください」というお言葉。原田先生の「自分で疑問を持つ」というお言葉。河邉先生の「日本の文化を守る」というお言葉も紹介させていただきます。

詩文書とは何か? どんな作家になりたいのか? いろいろと考える契機となりました。古典臨書も詩文書の創作も、書いて描いて、経験を増やしていくことに尽きるのでしょう。永い道のりになりますが、書の道を歩んでいきたいです。

浜先生はじめ書燈社の先生方、こんな贅沢な機会を与えてくださいまして、ありがとうございます。他団体の講師の先生方や参加された方々とのご縁にも感謝しています。そして、理解と応援をしてくれる家族にありがとう。

この春季研究会のまとめは、日本詩文書作家協会の会報に掲載される予定です。

講師の先生方の席上揮毫作品、規定課題の秀作も「話題作」として掲載されますので熟読をおすすめします。

日本詩文書作家協会ウェブサイト→ http://shibunsyo.jimdo.com


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